鶴田至弘議員の質問(九月十九日)
  【1】財政の中期展望と来年度の予算編成について
一. 財政にかかわる国の動向について
鶴田 地方交付税の一兆円削減が示唆され、事態は厳しい状況の中で進行しつつある。地方交付税に大きく依存している本県では、言われるとおりの削減が行われれば、きわめて深刻な問題となる。国は「地方の自立」といいながら、地方の財政的自立への方策は示さず、削減を行おうとしている。国が責任をもつべき社会保障政策においても、医療関係などに端的に国民負担増大の動きをみせている。地方財政にかかわる国の予算編成の動向について、知事の所感を。地方交付税制度は改善すべき点は多々あるが、地方を成り立たせる基幹的な制度である。この削減など絶対に認めないことを望む。 
■木村知事  これからの国の動向等を見守りつつ、引き続き事務事業の見直しに取り組み、今後の改革に柔軟に対応できる財政構造の確立に努めていく。また、地方交付税の見直しについては、地方の実状や意見に十分な配慮が必要なので、先日も鳥取県知事と共同で緊急アピールを行ったが、今後とも機会あるごとに国に対して地方の生きた意見を述べていきたい。


二. 中期展望に関連して
鶴田 財政の中期展望に、近年の財政危機は「過去最大の七百四十億円にもなった公債費によって義務的経費が膨張したこと」と指摘しているが、その原因は知事が「最前線から地方財政改革論議に寄せる」の文書で述べているように国の責任がその主要なものである。ここでもまた「地方の自立」という言葉で地方に困難が押しつけられようとしている。地方交付税の一方的削減、地方財政にかかわる制度の改悪が進められれば、見直さざるをえなくなる。どんな展望をもっているのか。
■木村知事  今後改革の具体的内容等を踏まえ、見直しの必要が出てくるであろうが、現在行われている交付税の縮減議論などを踏まえると、より厳しい内容になると認識している。


三. 地方消費税、外形標準課税について
鶴田 地方の自立が保障されるためにはそれを支える財源が保障されることが当然の前提である。地方分権論議のなかでも盛んに論じられたが、結果的には、ほとんど考慮されないままだった。小泉改革でも地方交付税の削減だけが提出されかわるべき財源が示されず地方に大きな不安を与えている。全国知事会、市長会等で地方消費税の拡充による税源移譲、本県の予算要求に見られる法人事業税をその所得にかかわりなく外形標準課税とするという要望もあるが、問題の正しい解決にはならない。地方消費税の拡充はさらなる消費税率の上昇をもたらし、消費税引き下げの道を閉ざしてしまう。法人事業税を赤字の中小企業にまで課税する外形標準課税にすることは中小企業を一層苦しい立場に追いやる。和歌山県下の中小企業団体は「消費税以上に外形標準課税が恐い」と言っていた。地方財政の充実のためにも、租税の民主主義、直接税中心、総合累進性、生活費非課税という原則を貫くべきではないか。
 ■木村知事
 地方消費税の拡充による税源移譲については、先の地方分権推進委員会の「最終報告」で地方税充実確保の一方策として、地方消費税の充実がうたわれている。本県も、地方分権を推進する上で、国から地方への財源移譲において財源の地域的偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方財政体系の構築が必要だと考えている。法人事業税への外形標準税の導入については、税負担の公平性の確保、応益課税としての税の性格の明確化、ことに地方分権を支える基幹税の安定化を図るものであり、増税を目的としての導入ではない。


四. 来年度予算編成と景気・雇用対策について
鶴田 来年度の予算編成にあたっては、現下の深刻な不況の中で様々な形での生活苦や営業の困難を余儀なくされたり、社会保障制度の改悪に今まで以上に暮らしが困難になるであろう人々を考慮にいれて努めていただきたい。そのため、県独自で行っている福祉関係の諸制度は本年度予算と同じく、維持することを求める。また、景気雇用対策の一貫としての事業も地域や暮らしに密着した事業で小零細企業にも仕事が回るような、また極力雇用の増大につながるような施策を大幅に展開することを求める。
 ■木村知事 福祉関係の事業見直しについてはその特性に十分配慮することが重要と考えている。景気雇用対策にかかる事業については、従来の公共事業の形態に捕らわれず
、例えば「緑の公共事業」のように自然環境の回復・再生事業と景気・雇用対策を両立させるような工夫した事業の創出について検討していきたい。

【2】景気、雇用対策について
一. 県下の景気・雇用状況見通しについて 
鶴田 歴代政府の大型公共事業積み増しによる結果として、現在、国と地方公共団体は莫大な債務をかかえている。企業倒産の規模が拡大し、完全失業率は五%、近畿では六.三%と統計史上最悪を記録。県下の有効求人倍率は〇.四五倍と全国でも最悪のグループに位置している。政府が有効な景気対策を講ぜず適切な雇用対策を提起しないまま、構造改革を唱え、なかでもその切り札として不良債権の早期処理を強引に進めようとしている。和歌山県下に及ぶ影響として、千件をはるかに上回る倒産、一万人前後の失業者が出るという試算もある。平年の数倍の倒産、三万人をはるかに超える失業者という事態が二,三年間に生じることは、経済基盤の相対的に弱い本県においてはきわめて深刻な事態である。県民生活と福祉の向上を進める責務をもった自治体・和歌山県としてどのような予測をもっているのか。

 ■内田商工労働部長
 県内の倒産については、平成十二年の負債総額は約三百六十三億円、過去五年間では二番目に少ない金額だ。倒産件数は、百六十八件と過去二十年間で最悪の数字を記録した。本年一月から八月の負債総額累計は大型倒産の影響もあり約五百八十九億円と昨年同期の約二倍、倒産件数は九十五件と昨年同期を約二十%下回っている状況。今後、景気の低迷の長期化、不良債権最終処理の影響により、破綻する企業の増加が予想されている。連鎖倒産・失業者の増加をはじめとする支援策を強化するとともに、和歌山労働局との連携を密にしながら雇用対策の充実に取り組む。


二. 政府のセーフティーネットと和歌山での見通しについて
鶴田 政府はセーフティーネットをもって、特に新しい産業の創出やサービス産業への期待が見込まれ、五百三十万人の雇用創出をはかるとしている。この数字に裏付けはない。和歌山のサービス産業の厳しさは銀行の倒産や大手小売店の撤退などにあらわれている。新しい雇用創出も厳しい状況で、予想される大量失業の受け皿になるとは考えられない。国はこれまで四回の雇用対策を打ち出した。うち三回の雇用創出目標合計が二百五万人だった。しかし実際に雇用に結びついたのは二十七万人だったとされている。和歌山県下の実績はどうだったのか。五百三十万人の雇用創出プランに我々はどれだけの期待がもてるのか、関係当局の見解を示していただきたい。

■内田商工労働部長
 平成十年の緊急雇用開発プログラムを初めとして、今まで国において七回雇用対策を実施しており、和歌山県下における実績は、失業の予防を目的とした雇用調整助成金が千三百三十六件、四十一億四千四百二十五万円。これにより新たな雇用者数が約五千八百人、IT化等に対応した職業訓練等が入所者数七百九十九人となっている。
 雇用創出プランについて。例えば子育て支援・高齢者向けのケアハウス創設等、今後雇用機会の拡大が見込まれるサービス部門への労働力移動を円滑に促進するなど産業構造の変化に対処した諸施策の実施により、五年間で新たな雇用を創出するものであり、大いに期待している。


三. 県としての対策強化について
鶴田 本県の昨年度来の景気・雇用対策の実績はどのようなものだったのか。とくに、青年、高齢者の雇用対策などはどのように対処したか。中高年の失業者は住宅ローン、子どもの就学資金、雇用保険のきれたあとの生活などの深刻な問題でとくにどんな対策をおこなったのか。今後さらに、不良債権早期処理政策により、融資枠拡大、返済期限延長、信用保証協会の保証条件緩和、失業者の生活相談、失業の危機に直面している方々の相談窓口設置、県独自の雇用開発、来年度予算における景気・雇用対策の充実等、積極的な対応を求めたい。
 ■内田商工労働部長 景気対策では有識者による委員会を近く設置し、新産業の創出支援等の具体策をすすめ、積極的な来年度予算編成に取り組みたい。現在、金融対策では県制度融資の融資枠の拡大や金利の引き下げ、融資期間の延長等の措置を講ずるとともに、信用保証協会においても無担保枠の拡大等、保証条件の緩和に鋭意取り組んでいる。不況対策特別資金制度を拡充する。 雇用対策としては、平成十二年度の実績は人材Uターンフェア及び合同面接会を開催し、総来場者数は三千八百二十三人で、合計三百八十九人の採用内定があった。十月の高齢者雇用促進月間を中心として国及び関係機関とともに事業主に対し、求人の開拓を働きかけていく。


四. 仮称「緊急景気・雇用対策本部」の設置について 
鶴田 現在の大不況に苦しむ県民の状況をできる限り具体的につかみ、対策を考え、希望のもてる生活の展望を示す特別の対策をする「緊急景気雇用対策本部」(仮称)を創設し対処するべきだ。実態が反映され、実効の伴うような対策機構を立ち上げていただきたい。
 ■内田商工労働部長 平成六年に全庁的な「和歌山県景気・雇用対策本部」を設置している。近くこの対策本部を開催する。今後も、国の施策等を注視し、関係団体等の意見や要望を十分に聞きながら、効果的な実施に向け努める。


五. 国への要望を強力に
鶴田 国の景気・雇用対策の転換を県としても腰を据えて求めるべきだ。県民の厳しい生活実態の改善のためにはしっかりとした、実効性のある対策を求めるべきだ。知事の「緑の雇用事業」の提案だけではこの厳しい現実には対処できないであろう。国に対して消費税減税、大企業の横暴な解雇の規制、サービス残業を規制し、労働時間を短縮しその分で雇用の拡大をはかる事などを求めるべきであると考える。
 ■木村知事 国が進めるセーフティーネットの構築等雇用対策の充実や実効ある実施をはたらきかけていきたい。「緑の雇用事業」もこの趣旨に沿ったものであり、国に働きかけている。消費税の減税については、国政の場で議論されるべきものであると考えている。


【3】和歌山下津港への米戦艦の入港について
一. 入港の目的について
鶴田 八月二十八日から三十一日、和歌山下津港にアメリカの戦艦二隻が入港した。入港目的は物資の補給・乗務員の休養・交流・ボランティアとのことであった。また、アメリカ第七艦隊はこの寄港直前海上自衛隊との共同訓練を実施すると発表、和歌山に寄港した戦艦もそれに参加したとのことだ。母港で十分その目的を果たせる補給・休養等を、和歌山で行ったのはなぜか。今回の寄港は軍事演習後の物資の補給、休養なので軍事性がないとは言い切れない。今回の唐突な寄港は表向きは親善友好、しかし実際は周辺事態法発動の地ならし、あるいはそれに関する必要な調査のための寄港ではないか。
 ■木村知事 今回の入港目的は、日米地位協定に基づく通常入港であり、乗務員の休養、水等の物資の補給である。


二. 核搭載の有無について
鶴田 今回寄港の戦艦は核弾頭発射機能をもつ戦艦だった。知事は外務省に問い合わせ「事前協議がないから搭載されていないものと思う」という回答を以て入港を是とした。核兵器の搭載が確認されれば寄港は拒否されるのか。核兵器搭載の疑惑がある場合はどう対処するのか。非核三原則の原則を遵守するならば当然「疑わしきは入港させず」との方針になるのではないか。和歌山市長が非核証明を求める要請を知事は拒否した。神戸港がしっかりとその立場を堅持していることを考えれば、知事として和歌山市長の要請に応えるべきではなかったか。
 ■木村知事 外務省に確認したところ、「日米安全保障条約上、いかなる核の持ち込みについても事前協議の対象であり、核の持ち込みについての事前協議が行われた場合には、政府としては常にこれを拒否する所存であるので、非核三原則を堅持するとのわが国の立場は確保されている」との回答を得ており、核兵器を搭載しての寄港はあり得ない。


三. 日米地位協定について
鶴田 今回の寄港は日米地位協定による通告であるならば、あまりにも屈辱的なことだ。完全な軍事的従属だ。二隻の戦艦の和歌山下津港の岸壁使用料は日米地位協定により、和歌山県は徴収できない。県が防衛庁に請求すれば損失補填として支払われるそうだが、アメリカが支払うことはないとのことだ。これは知事の責任ではないが、日本の主権問題として考え直すべきだ。
 ■木村知事
 日米地位協定は国家間の条約なので県は意見を述べる立場にはない。入港料、港湾施設使用料については、防衛施設庁に対しすでに請求することで事務をすすめている。


四. 和歌山の港を平和の港に
鶴田 周辺事態法はアメリカの指揮のもと日本が米軍に協力することを定めている。地方自治体もそれに協力することが求められ、それは港湾だけに留まらない。和歌山下津港が平和的な日米友好の場になることは大いに歓迎するが、軍事的デモンストレーションを行う戦艦との友好はありえない。核の問題については入港にあたっては非核証明の提示を前提とし、県下の港湾は軍事的利用には供さないということを宣言すべきだと考える。
 ■木村知事 米軍艦船は、日米地位協定第五条で入港料を課されないで日本の港に出入りできるとなっており、物理的に港湾施設が利用できないという正当な理由がなければ、制限はできない。周辺事態安全確保法に関連した県内の港湾施設等の利用については、具体的な協力依頼の内容も明らかでない状況なので、仮定の問題に答えるのは難しい。今後も県民の安全、幸せを念頭においた県行政を進めていきたい。


【4】教育について
一. 教員削減よりも三十人学級を
鶴田 財政運営プログラム2により、平成十一年から十五年にかけて教職員を五百名削減の方針が打ち出されて現在進行中である。過日、山形県が二,三年がかりで三十人学級を実現すると発表した。国の制度内での工夫、努力よりも、もっと大胆な計画性のある三十人学級へのプランを作成してはいかがか。ついては来年度の削減は見合わせ、小学校の一年生や中学校の三年生、教育上最も増員が求められるところから考える余地はないのか。同和事業の特別対策が終了するときでもあるので、同和加配の二百八十五人を一般の方に回すことも考えれば、相当の仕事が可能であると考える。 
 ■小関教育長 教職員定数の確保及びその配置にあたっては、ティーム・ティーチングや生徒指導のための教員加配等、改善を行ってきた。さらに本年度は算数・国語・英語等の教科を中心に、二十人程度の少人数指導のための教員を配置した。今後、児童・生徒数の減少が見込まれるため、教職員定数の減少はさけられないが、限られた数の中で個に応じたきめ細かな指導など効果的な教育を推進するため、教職員定数の確保について引き続き努力していく。


二.高等学校への入学者選抜について 
鶴田 「高校入学は選抜であってはじめから全員入学は考えていない」というのが当局の態度だが、全員を受け入ていくというのが本来のあり方ではないか。昨年では、募集定員をはるかに上回る受験生があった有田地方では特例措置として当該校や隣接校の学級定数を増やして受け入れたという例もあるが、同様の事態が予測されそうな同地方やその他いくつかオーバーが予測される高校については募集定員を増員することが必要と考える。
 ■小関教育長 高校入学者選抜に関して、来年度の募集定員については現在、各地域の中学校卒業予定生徒数や学校の規模、進学率、各学科への志願状況など、さらに最近の保護者や生徒の希望状況を反映した県立高校への戻り傾向をも十分考慮しつつ、総合的な観点に立ち、慎重に検討を行っている。今後、関係当局と協議しながら決定していきたい。


【再質問】
鶴田 戦艦が明らかに軍事利用を目的として入ってくることは、県民の安全を守るという立場からみれば明らかに矛盾している。国の専管事項で意見を言う立場にないということで、無言でいるというのは無責任だ。
 ■木村知事 外交問題は国の専管事項であるという大原則があるので今回はこのような対応をとったが、和歌山県民の生命・財産にかかわると判断した場合には、当然、必要な対応はとっていこうと考えている。


鶴田 緑の雇用事業が、一時的な失業対策にならないか心配だ。農山村あるいは地域全体を発展させていく大きな力だという見本を一つ実際に和歌山県行政の中で示し、内容を発展させていくことが重要と考える。
 ■木村知事
 一時的な失業対策的なものになれば、個人の尊厳を守りながら定住を進めたいという私の考えとは異なるので、現在様々な方面に働きかけているが、難しい面もある。ただ、国頼みにはせずに、県として財政的にゆとりもないので思い切ったことができないとしても、この事業の一端はこういうことだというような事業を行う必要はあると考えている。


鶴田 景気・雇用対策本部は、国の様々な景気・雇用対策事業が提示されたときに、県としてそれをどう消化するかというために協議をするための組織でしかない。県民が今この不況の中で雇用問題、景気問題でどのように苦労しているか、ということをしっかりと把握できる組織にすべきだ。そういう方向で組織の拡充、内容の見直しをしていくつもりはないのか。
 ■内田商工労働部長 景気・雇用対策については、県の対策では限りがあり、国の施策と相まって総合的に行うことで一層効果があがると考えている。平成七年に急激な円高に対応するために対策本部が実施した業務は、融資制度の拡充、巡回指導の強化、相談窓口の設置、実情把握のための産地等のヒアリングなどを行った。今後も対策本部を開催してこういうような業務を行っていきたい。


【再々質問】
○非核三原則について

鶴田 県民の安全を責任を持って対応するというのであれば、本当に核が搭載されていないかをみずから確認することが、知事としての責任ある態度ではないか。ぜひともそういう点を研究して対応することを要望する。

○外形標準課税について
鶴田 これは税が安定する、税の増収になるということだ。それは中小企業への負担の増加につながる。たとえ緩和措置をもうけたとしても、基本的にそういう性格をもつ。